1962年に堀江健一青年が一人で太平洋をヨットで横断しました。
彼の書いた「太平洋一人ぼっち」という体験記の中で、横断中、いろんな危険なことがあったことを話
している。嵐にあって、遭難しかけたこと。飢えたサメがヨットの周囲をうろついたこと。
いろんな恐怖を体験したんだけど、その中で、一番恐ろしかったこと。
それは、何かと言うと。食料として食べた缶詰を海に捨てて、翌日、ヨットの側に、その缶詰がそのま
まになっているのを見た時だって。
つまり、一日経っても、ヨットが全く前に進んでいないということを知った時。
こいでもこいでも、波にもてあそばれて、同じ所から全く前に進んでいない状況。
その缶詰を見た時、怖れと、不安で絶望してしまった、と言います。
石川啄木が 「働けど働けど働けど わが暮らし楽にならざり じっと手を見る」
と歌っていますが、この歌は貧乏が苦しいのではありません。
貧乏を脱するために努力して働く、しかし、働いても働いても、何も変わらない。報われない。
そのことを嘆いているのです。
ボクたちの人生には、このような、全く、前に進まない。努力しても、報われない。
こんなことがたびたびありますよね。
すると、自分のやっていることは、無駄だった。徒労に終わりそうだ。
そう考えてしまいます。
でも、そうではないんです。
こういう時というのは、ものすごい忍耐が試される。葛藤、無力感との戦い。
すべてを投げ出したい、という衝動にかられてしまって、それを我慢するのに、
パワーが働く。
実は、この時、ボクらの内面に、すごい成長をもたらす。
何もしていないようで、すごい、成長しているんです。
ある人はそれを、STAYING POWER(ステイイングパワー)と言います。
とどまる力ですか?
このSTAYING POWERを持つ人は、困難を乗り越える力を身につけいている。
多くの人は、これを身につける前に、あきらめたり、環境を変えたりする。
大きく、実を結ぶためには、この経験は絶対、必要です。
冬に雪でおおわれた、その下で、新芽が春を待って、じっと耐えるように。
花開く日を待つ、この経験。
だから、うなくいかないこと。がんばっても報われないこと。
決して、マイナスじゃない。