さまよう刃
『
さまよう刃』
かつては「デッドマンウォーキング」
最近では邦画の「手紙」など加害者の側から描いた映画があります。
今回は被害者の苦悩を描いた映画。
そういえば、「帰らぬ日々」「シークレット・サンシャイン」も、
子供を殺害される親の苦悩を描いた映画だった。
しかし、ヘヴィ度ではこの「さまよう刃」の方がダントツですね。
主人公の寺尾聡は妻を亡くして、娘だけが生きる意味をなしていた。
それなのに、レイプ犯によって殺害されてしまう。
しかも、その犯行ビデオを見てしまう。(このシーンはやりきれない)
それ以降の彼の人生は失われており、復讐だけが彼の存在理由となる。
寺尾が泊ったペンションのオーナーも母子家庭であり、
彼にいたく感情移入し、彼にライフルを手渡す。
娘をもつわが身として、寺尾の肩を持たずにはいられない。
山口県光市の母子殺害事件は映画ではなく、じっさいにあったわけで
被害者遺族の苦悩はいかほどであろう。
現行の日本の法律では、彼らはさらに苦しむことになる。
寺尾聡の復讐は怒りというより、深い悲しみが伝わり、
なんともやりきれない映画だ。
過去に赦しをテーマにした本を紹介したが、
人を本当の意味で赦すということは、
まさにアメージングであり、人間に本来なせるものではない。
だから、赦しを基準に世の中の事件を見るつもりはない。
個人的には一般社会では「目には目、歯には歯、命には命」
もちろん、加害者にも同情すべき背景はある。
しかし、この映画を見たら、それらは吹っ飛んでしまうインパクトがある。
ある意味、ホラーより怖い映画です。
関連記事